今回はチェコの首都プラハから少し足を伸ばして、南ボヘミア地方にある『チェスキー・クルムロフ』という街を訪れます。
チェスキー・クルムロフは「世界で最も美しい街」とも呼ばれる場所で、おとぎ話に出てきそうな中世の面影を残す街です。
プラハからチェスキー・クルムロフへの行き方や、チェスキー・クルムロフの歴史、見どころをご紹介していきます!
チェスキー・クルムロフの歴史
『チェスキー・クルムロフ』はチェコの南西部にあり、ボヘミアと呼ばれる歴史的な地域に属しています。
13世紀にヴルタヴァ川沿いに作られたチェスキー・クルムロフの町は、ボヘミアの有力貴族であったローゼンベルク家の下で発展していきました。

16世紀にはルネサンス様式の建物が多く建てられ、より一層華やかな街へと変貌を遂げます。
しかし、その裏で財政難の末、チェスキー・クルムロフは神聖ローマ皇帝のものとなり、この時期にバロック様式の建物が街に加わります。
19世紀以降はオーストリア=ハンガリー帝国、チェコスロバキア、ドイツに属し、ドイツが第二次世界大戦に敗れると、再びチェコスロバキア領となります。
一時は華麗な街として発展したチェスキー・クルムロフでしたが、第二次世界大戦後は、荒廃の一途をたどります。
街の大半を占めていたドイツ系住民は街を離れ、歴史的な建築物も放置されることとなります。

チェスキー・クルムロフの歴史的価値が再認識され始めたのは「プラハの春」と呼ばれる変革運動が起こった1960年代以降のことでした。
1989年に起こった民主化運動「ビロード革命」の後、チェスキー・クルムロフの歴史的な景観を復元する為、建物の修復が進められます。
こうしてようやく当時の美しい姿を取り戻したチェスキー・クルムロフは、「世界で最も美しい街」と呼ばれるまでになったのです。
それまでの道のりは険しく、住民の方々の多大な努力の結果だと言えるでしょう。
チェスキー・クルムロフの見どころ
続いては、街全体が世界遺産に登録され「世界で最も美しい街」とも言われるチェスキー・クルムロフの見どころをご紹介していきます!
ヴルタヴァ川沿いに建つ世界で最も美しい街

チェスキー・クルムロフの南側にあるバス停に着くと、すぐに街の全体が見渡せる絶景ポイントが訪れます。緑豊かな自然の中にオレンジの屋根が映える美しい景色です。
この日は天気も良く、高くそびえるチェスキー・クルムロフ城の塔が青い空へと向かって伸びているようでした。

チェスキー・クルムロフの街は「ヴルタヴァ川」という川に沿って作られました。
ヴルタヴァ川はドイツ語のモルダウという名前でも知られるチェコで最も長い川で、首都プラハを通りドイツへと流れています。
中世の面影を残す美しい街並み

街全体が世界遺産に登録されているチェスキー・クルムロフは、どこを歩いてもおとぎ話の世界に迷い込んだような美しい街です。
中世ヨーロッパらしい石畳の上を歩けば、まるで絵本の中に入り込んだような気分になります。
街の中心にある「スヴォルノスティ広場」にはホテルやレストラン、観光案内所が並び、観光客で賑わいます。

チェスキー・クルムロフの街自体は小さいの歩いて十分まわることができます。
道が曲がりくねったり、急に行き止まりだったり若干分かりにくいですが、チェスキー・クルムロフ城の塔の方角を頼りに歩いて行けば、方向を間違えないでしょう。
ちょっとした路地に迷い込むと、そこもとても良い雰囲気。ヨーロッパの路地裏って絵になりますよね。
一際大きなチェスキー・クルムロフ城

チェスキー・クルムロフの街で一際大きな建物が、ヴルタヴァ川の北側に建っている「チェスキー・クルムロフ城」です。
チェスキー・クルムロフの一番の見どころと言って良いでしょう。
チェスキー・クルムロフ城が建てられたのは1240年。チェスキー・クルムロフの街が形成されてから間もない頃です。
その後、チェスキー・クルムロフの領主が変わると共に城の城主を変え、1950年にはチェコスロバキアの国有物となりました。
城内には1766年に作られたバロック様式の劇場が保存されています。世界的に見ても歴史的価値の高い劇場で、機械仕掛けの舞台装置を備えています。

お城の周りの建物をよーく見ると、実はこれ「だまし絵」なんです。
一見、石造りの壁に彫刻が施されているように見えますが、平面の壁に石を組んだような模様や、彫刻が彫られているような絵が描かれているんです。
このだまし絵はチェスキー・クルムロフ城を始め、街の色々なところで見られます。
幾度となく財政難に苦しんできたチェスキー・クルムロフは、少ないお金で街を美しく見せる為にスラヴィータと呼ばれるバロック期に流行しただまし絵を施したのだとか。

チェスキー・クルムロフ城のお堀にはクマがいます。チェスキー・クルムロフ城でクマが飼われるようになったのは16世紀後半だそうです。
クマは当時チェスキー・クルムロフの領主だったローゼンベルク家の紋章にも描かれるほど縁の深い存在でした。それ以来、お城ではクマが飼われています。
運が良ければお堀の中で遊ぶクマを見ることができるかもしれません。

チェスキー・クルムロフ城は建物だけでなく、庭園も綺麗です。よく手入れされた芝生の広がる庭園には綺麗なピンク色の花がたくさん並んでいました。
意外と観光客も少なくて、のんびり散歩するのにちょうど良かったです!
プラハからチェスキー・クルムロフへの行き方
プラハからチェスキー・クルムロフへ行くにはバスが便利です。
チェスキー・クルムロフまでは約3時間ほど。十分日帰りで行けるので、ぜひこの記事を参考にして足を伸ばしてみてください。
選べるバスは2つ
プラハからチェスキー・クルムロフ行きのバスを運行している主な会社は2つ。ひとつめは黄色い車体が目印の「レギオ・ジェット (Regio Jet)」。
スチューデント・エージェンシー(Student Agency)というチェコの会社が運営するバスサービスです。
もうひとつは、緑色のバスが特徴の「フリックス・バス (Flix Bus)」というヨーロッパでバスを運行しているドイツの会社です。
僕はプラハからはフリックス・バス、チェスキーからはレギオ・ジェットを利用しました。どちらも40人乗りくらいのいわゆる大型バスで、座席もゆったりしていて快適でした。
会社によってバス乗り場が異なる
プラハからチェスキー・クルムロフへ行くバスが発着するバスターミナルは、運行会社によって異なります。
レギオ・ジェットの場合は「Na Knížec (ナ・クニゼッチ)」のバス停から出発します。
ナ・クニゼッチのバス停は街の中心地からは少し離れた場所にあり、地下鉄B線の「Andel (アンジェル駅)」を出てすぐの場所にあります。
ナ・クニゼッチのバス停から乗る場合は、バス停にチケット売り場はありません。必ずインターネット等で事前にチケットを購入しておく必要があるのでご注意ください。
フリックス・バスの場合は「Florenc (フローレンス)」のバスターミナルから出発します。
プラハ中央駅の隣にある地下鉄B線とC線のフローレンス駅の近くにあり、プラハ中央駅から歩いても行ける距離です。
フローレンスのバスターミナルは隣国への長距離バスも発着する大きなバス停で、チケットカウンターが並ぶ建物もあります。
チケットはチケットカウンターで当日買うこともできますが、空席がなくなってしまうこともあるので、事前にインターネットで購入しておいた方が良いでしょう。
各バス会社のメリット・デメリット
レギオ・ジェットとフリックス・バスはどちらが良いのでしょうか?バス自体の乗り心地や設備はどちらも大きく変わりません。
チェスキー・クルムロフ行きバスの本数が多いのはレギオ・ジェットです。朝6時から1時間おきにバスが出ています。フリックス・バスは午前に2便、昼に1便、夕方に1便と少なめです。
※最新の運行情報は各社のホームページでご確認ください。

バスの発着場所は、フリックス・バスが発着するフローレンスのバスターミナルの方がアクセスが良いです。バスターミナルにチケットカウンターがあるのも便利ですね。
プラハ中央駅から歩いて行けるので、街の中心に近い場所に泊まっている方やプラハに着いてすぐにチェスキー・クルムロフに向かう方にとっては使い勝手が良いでしょう。
レギオ・ジェットが発着するナ・クニゼッチのバス停は街の中心地からは少し離れた場所にあります。

料金は曜日や時間によって異なります。午前中の便だとレギオ・ジェットが片道7.8ユーロ (約1,000円)、フリックス・バスが5.99ユーロ (約720円) 〜9.99ユーロ (約1,200円) 程度です。
チェスキー・クルムロフへ行く曜日や時間の料金をホームページで検索してみてください。
帰りのチケット購入も忘れずに!
チェスキー・クルムロフへ行く際は、プラハへの帰りのバスも事前に予約しておくことをオススメします!
僕はチェスキー・クルムロフにどれくらい滞在するか分からなかったので、とりあえず行きのバスだけ予約していました。
帰りのチケットを買おうとチェスキー・クルムロフのツーリスト・インフォメーションへ行くと、その日最後のバスの最後の1席だけが残っていました!
なんとか帰ることができましたが、あの時チケットが売り切れていたらチェスキー・クルムロフで宿を探す羽目になっていたところでした。
チェスキー・クルムロフへのツアーも便利
自分でバスのチケットを買ったり、バスに乗ったりするのが不安な方は、オプショナル・ツアーに参加するのがオススメです。
僕もよく利用している「VELTRA」のホームページでは、日本語ガイド同行のツアーや近隣の街とセットで訪れるツアーもあります。

次回はチェコを出発し、オーストリアの「ウィーン」へ向かいます!