今回は『エアーズロック (ウルル)』の登山に挑戦した時の様子をお伝えします。登山が禁止された今ではもう見ることが出来ない頂上からの絶景をご覧ください!
※2019年8月に訪れた際の記事です
2019年に禁止されたエアーズロック登山
エアーズロック (ウルル) は、先住民族アボリジニとって神聖な場所であることから、多くの観光客がそこを登ることに対しては以前から反発がありました。
一方で、オーストラリアやアボリジニにとっても重要な観光資源であり、オーストラリア政府がアボリジニに入場料の一部を支払うことで登山が認められていました。
しかし、長年の協議の結果、2019年10月25日をもって観光客による登山はついに全面的に禁止となりました。
これに関してはアボリジニの中でも意見が分かれているようですが、結果的には観光客による登山を快く思わない人の意思を尊重した形となりました。
確率は30%!エアーズロック登山の条件
エアーズロックは登山が許可されていた時もいつでも登れるというわけではありませんでした。
天候や気温、風、雲の位地など、条件が揃わない日は登山道が閉鎖されます。その為、登山が出来るのは1年のうち30%ほどということでした。
登山道が閉鎖されるのは、以下の条件のいずれかに当てはまる時です。
- 気温:その日の予想最高気温が36℃以上である場合
- 風:風速25ノット以上の風が吹くと予想される場合
- 気圧:北西または南西50km以内に強い低気圧が観測された場合
- 雨:3時間以内に20%以上の確率で降雨が予想される場合
- 雷:3時間以内に5%以上の確率で雷雲の発生が予想される場合
- 雲:山頂よりも低い位置に雲が出ている場合
- 太陽:日没の1時間半前〜日の出の1時間半後
一年を通して最も難しいのが「風」だと思います。また、夏は気温が高く登れないことが多いです。
エアーズロックに何日も滞在する場合は、そのどこかのタイミングで登ることがてきるのですが、僕のように1週間程度の休みの間に他の都市も訪れようとすると、エアーズロックに滞在できるのは、せいぜい2日~3日でしょう。
僕の場合は初日にカタジュタを訪れて、2日目にエアーズロック、その日のうちにシドニーへ移動するというスケジュールだったので、一発勝負です。
30%という確率を考えても「登れたらラッキー」くらいの気持ちでした。登山が出来るかは、現地に行ってみないと分からないということだったので、祈りながら登山道の入口へ向かいました。
結果は…登山道のゲートが開いており、登れることに!
エアーズロックの登山道
登山と聞いてイメージする道のりは人様々だと思います。僕はどちらかというとなだらかな道を歩くハイキングのようなものを想像していました。
しかし、実際は全然違いました。まず最初に現れるのが、この壁のようにそり立つ急斜面。最大斜度48度の急勾配が続きます。
しかも地面は土ではなく「岩」です。よく滑るし、踏ん張りが効きません。
これを見て登山を諦める観光客も少なくないそうです。これまでにエアーズロック登山中に滑落して人を命を落とした人もたくさんいるので、無理はしない方が賢明です。
最初の坂道には鎖が張られており、それを掴んでよじ登っていきます。鎖を掴まずには登れません。登山というかもはやロッククライミングのような感覚。
足を滑らせて転べば、下まで真っ逆さまでしょう。大人にとってもかなりの恐怖です。
しかも前後には絶えず人がいるので、追い抜くことも立ち止まることも出来ません。疲れた場合は斜面が緩やかな場所 (と言っても上の写真くらいの斜度です) で脇に逸れて休むしかありません。
なんとか最初の急な斜面を登り終えました。かなりの高さまで昇ってきたことが分かります。
登山ができる条件が揃っても、登頂成功率は50%ほどだそうです。脱落者の多くが、この最初の坂道がクリアできずに下山します。
最初の急勾配を登り終えると、後は手すりのない岩の上を進んでいきます。先ほどまでと比べると緩やかにはなりますが、それでも場所によってはなかなかの斜度です。
この辺りまで来ると、登りだけでなくアップダウンの繰り返しになります。順路を示す白い点線をなぞるように足元に気をつけながら進んでいきます。
体力的には最初の急斜面が一番キツいですが、最後までまだまだ油断はできません。所々に急な斜面があったり、左右どちらかにバランスを崩すと数メートル下まで落ちてしまうような細い道があります。
麓から頂上までは片道約1.5km。約1時間 ~1時間半の道のりです。
エアーズロックの頂上
こうしてなんとかエアーズロックの頂上到着しました。頂上は「点」というよりは「面」になっていて、これまでには無かった広々とした場所になっています。
頂上から見る景色はやはり絶景です。高さ335mのエアーズロックからはオーストラリアの大地が遠くまで見渡せます。
西側には前日に訪れた「カタジュタ」の姿も見ることができます。
>>『カタジュタ (マウント・オルガ)』のウォルパ渓谷を散策
エアーズロックの頂上を示すプレートが立っています。おそらくここがエアーズロックの最も高い場所です。
プレートと一緒に記念撮影をする人の長い列ができていました。頂上に来たからにはぜひ写真に納めておきたいですよね。
エアーズロックに登ってみた感想
エアーズロック登山はかなり大変でしたが、その分登りきった後の達成感とそこから見る景色は非常に大きかったです。
登山が数ヶ月後に禁止されることも分かっていたので、エアーズロックに登ったという思い出にもなりました。
しかし、結論から言うと「エアーズロック登山は禁止すべきだった」と思いました。
理由のひとつは安全面。
特に最初の坂道はかなり危険です。子供や年配の方も挑戦していましたが、大人でも普段から岩山を登るのに慣れていなければ恐怖を感じる道です。
世界的に有名な観光地ともなれば様々な人が登ろうとします。しかし、過去に何度も事故が起きていることからも分かるように軽い気持ちで登るような場所ではありません。
もうひとつはアボリジニへの配慮です。
意見が分かれているとは言え、エアーズロック (ウルル) にたくさんの観光客が訪れるのを良く思っていない人がいることも事実です。
エアーズロックがアボリジニにとって神聖な場所だから、というのと、あとは観光客が多すぎるんだと思いました。特に僕が訪れたのが登山禁止となる直前だったこともあってか、登山道は行列ができるほど混み合っていました。
自分の家に数人の知人を招くのは良くても、知らない人がたくさん来たら嫌ですよね?実際に行ってみて「これは多すぎる」と感じました。
以前テレビでアボリジニの人が「自分たちの文化に配慮さえしてくれれば自分たちの土地 (エアーズロックの周辺) に来てくれるのは嬉しい」と言っていたので、観光客そのものが迷惑というわけではないと思います。
自分が登っておいて偉そうなことを言うのもなんですが、エアーズロック登山は禁止して正解だと思いました。
次回はエアーズロックの周辺にある散策路をご紹介します。