今回は、パリの街で最も有名な書店『シェイクスピア・アンド・カンパニー』をご紹介します。
20世紀のパリにおける英語文学の中心となったシェイクスピア・アンド・カンパニーは、パリで大人気の書店です。
さらに、映画などのロケ地に使用されていることもあり、パリだけでなく世界中で有名になっています。
決して大きなお店ではありませんが、天井まで届く棚いっぱいに書籍が積まれた店内は、本好きには堪らない空間です。
シェイクスピア・アンド・カンパニーの歴史
初代シェイクスピア・カンパニー (Shakespeare and Company) は、1912年にアメリカ人女性のシルヴィア・ビーチによってデュプライトン通りにオープンしました。
その後、1922年にはパリ6区のオデオン通りに移店し、1941年まで営業していました。
初代シェイクスピア・アンド・カンパニーは、現在もそうであるように書店だけでなく図書館でもありました。
第二次世界大戦期まではアメリカ文学の中心地となり、当時は「老人と海」や「誰がために鐘は鳴る」のアーネスト・ヘミングウェイや、「グレート・ギャツビー」のスコット・フィッツジェラルドも通ったと言われています。
二代目のシェイクスピア・アンド・カンパニーは、1951年にアメリカ人のジョージ・ウィットマンによって現在のセーヌ川沿いの場所に開かれました。
しかし、この時の店舗はまだ「レ・ミストラル」という名前でした。この建物は元々16世紀に修道院として建てられたものだったそうです。
ウィットマンが開いたシェイクスピア・アンド・カンパニーはパリ左岸(セーヌ川の南側の地区)のボヘミアン(自由奔放な生き方を求める人たち)の文学活動の中心地となりました。
1950年代には、ニルヴァーナのボーカルだったカート・コバーンも愛したというアメリカの小説家ウィリアム・バロウズをはじめとする「ビート・ジェネレーション」と呼ばれる文学グループの拠点となりました。
1962年に初代店舗のオーナーだったシルヴィア・ビーチが亡くなると、レ・ミストラルは「シェイクスピア・アンド・カンパニー」の名を襲名します。
現在はジョージ・ウィットマンのお嬢さんのシルヴィア・ウィットマンさんがオーナーを務めています。
ジョージ・ウィットマンの時代から書店にはベッドを備えた宿泊施設があり、「タンブル・ウィード」と呼ばれる無名の若い文学者を支援する為、書店の手伝いをする代わりに、食事や宿泊場所を提供しています。
あの映画のロケにも使われた店舗
映画好きな方ならピンと来るかもしれませんが、シェイクスピア・アンド・カンパニーは、2004年に公開された映画「ビフォア・サンセット」(Before Sunset) のロケ地として使用されました。
ビフォア・サンセットは1995年公開の「ビフォア・サンライズ (Before Sunrise)」の続編にあたります。
第一作でウィーンで出会い、短い時間を過ごしたアメリカ人のジェシーとフランス人のセリーヌが、9年後にパリで再会するという内容です。
小説家となったジェシーは、自身の9年前の出来事を書いた書籍のプロモーションの為、パリを訪れていました。その際に9年ぶりにセリーヌに再会したのが、この「シェイクスピア・アンド・カンパニー」でした。
シェイクスピア・アンド・カンパニーが登場するのは冒頭の数分ですが、とっても印象に残るシーンなので、見覚えのある方もいるのではないでしょうか。
2011年に公開されたウディ・アレン監督の映画「ミッドナイト・イン・パリ」にも少しですが、シェイクスピア・アンド・カンパニーが出てきます。
ミッドナイト・イン・パリは、パリの美しい風景が満載の映画で、個人的にはとてもおすすめの映画なので、また別の機会に詳しくご紹介したいと思います。
本を買うと記念にこんな特典が…
せっかくなので何か本を買って帰ることにしました。
大手の書店のように著者や出版社ごとに並んでおらず、非常に雑然と本が積まれています (そのように見えるだけで、実際は何らかの秩序があるのかもしれません)。
なので、書店の中では宝探しをするような感覚です。
そんな中で見つけた「クマのプーさん」(Winnie-the-Pooh) の本を、英語を勉強中の妹に買っていくことにしました。
クマのプーさんはディズニーのアニメーションの原作となったイギリスの児童文学作家A.A.ミルンの小説です。
ディズニー作品では赤いシャツを着ているプーさんですが、E.H.シェパードが担当した原作の挿絵ではシャツは着ていません。
ハチミツ好きという設定や、友達のクリストファー・ロビンやピグレット、イーヨーなどの友達はディズニー版と同様です。
なお、クリストファー・ロビンは、この本の原作者であるA.A.ミルンの息子クリストファー・ロビン・ミルンをモデルにしています。
本を買うと、シェイクスピア・アンド・カンパニーのスタンプを押してくれます。
ちゃんとこの書店で買ったことが分かるので、とっても良い記念になりますね。妹の為に買った本ですが、自分が欲しくなってきてしまいました。
スタンプにはシェイクスピアの顔と店名、そして「Kilometer Zero Paris」の文字が書かれています。
これはシェイクスピア・カンパニーのすぐ近くにあるノートルダム大聖堂が、パリの道路元標 (道路標識などで距離表示の起点となる場所) であることを示し、パリの中心地であることを意味しています。
皆さんもシェイクスピア・アンド・カンパニーで本を購入した際は、忘れずにスタンプを押してもらいましょう!
シェイクスピア・アンド・カンパニーの営業時間など
■シェイクスピア・アンド・カンパニー (Shakespeare and Company) | ||
営業時間 | 月曜 – 土曜 | 10:00〜22:00 |
日曜 | 12:30〜20:00 | |
定休日 | なし (12/25は休業) | |
HP (英語) | https://shakespeareandcompany.com |
※2019年3月現在。最新の情報はホームページにてご確認ください。
シェイクスピア・アンド・カンパニーは、パリ5区のセーヌ川沿いにあり、前回ご紹介したノートルダム大聖堂から見てセーヌ川を挟んだ対岸にあります。