今回の記事も前回に引き続き、フランスのパリ郊外にある『ヴェルサイユ宮殿』についてです。
前回※は宮殿内部の見どころを中心にご紹介しましたが、今回はヴェルサイユ宮殿の美しい庭園と、「トリアノン」と呼ばれる2つの離宮をご紹介していきます。
※参考記事:『ヴェルサイユ宮殿』豪華絢爛な宮殿内の見どころ
ヴェルサイユ宮殿の庭園
ヴェルサイユ宮殿は、ルイ14世によってヴェルサイユ宮殿が造られたのとほぼ同じ時期に、造園家のアンドレ・ル・ノートルの設計によって造られました。
アンドレ・ル・ノートルは、先日ご紹介した「シャンティイ城」の庭園やパリのチュイルリー庭園も手がけた人です。
>>参考記事:『シャンティイ城』の美しい庭園を散策してみた
ルイ14世は、庭園にも強いこだわりがあったそうで、その建設には宮殿よりも多い36,000人が投入され、完成までは40年の歳月を要しました。
宮殿の前には2つの長方形の池があり、池に反射した光が「鏡の間」がある宮殿中央の窓から射し込むようになっています。池にはヴェルサイユ宮殿の姿が映っていました。
ラトナの噴水
ヴェルサイユ宮殿の庭園の特徴は、各所に散りばめられた池と噴水です。中でも目を引くのが、宮殿の正面にある「ラトナの噴水」です。
古代ローマの詩人オヴィディウスの「変身物語」をモチーフにしており、アポロとディアーナの母であるラトナが子供たちを守る姿を表現しています。
中央にあるラトナと子供達の大理石の彫刻は、ルイ14世に仕えた彫刻家のマルシー兄弟によって造られたものです。
アポロの噴水
庭園のほぼ中央にある「アポロの噴水」は、ルイ13世の時代に「白鳥の湖」と呼ばれていた場所をルイ14世が改修し、アポロが馬車に乗る姿を表した彫刻を加えたものです。
アポロの像は、ヴェルサイユ宮殿の内装を手掛けた画家のシャルル・ル・ブランがデザインし、彫刻家のジャン・バティスト・チュービーによって造られました。
ドラゴンの噴水
庭園の北側のエリアには「ドラゴンの噴水」があります。この彫刻もアポロにまつわる伝説の1場面を表したもので、ドラゴンの周りを白鳥に乗り弓矢を構える天使たちが囲んでいます。
王の散歩道
こちらは「王の散歩道」と呼ばれる芝生の道です。幅45mの芝生はアポロの噴水へと続いています。
アポロの噴水と同じくルイ13世の時代からあったそうですが、当時は幅15mほどの小さなもので、今よりも急な坂道でした。芝生の左右には、12体の彫刻と大きな壺が並んでいます。
王の散歩道の向こうには、アポロの噴水を挟んだ場所に全長1670mもある「大水路」が続いています。夏には水路の上に船が浮かぶそうです。
ヴェルサイユ宮殿の庭園の大部分は美しい自然が広がる遊歩道になっています。庭園を気の向くままに散策してみると、ふと美しい風景を見つけることができます。
グラン・トリアノン(大トリアノン)
ヴェルサイユ宮殿にはトリアノンと呼ばれる2つの離宮があります。そのひとつがルイ14世の命によって造られた「グラン・トリアノン」(大トリアノン/Grand Trianon)。
ルイ14世が宮殿から離れ、プライベートな場所として使用し、彼の公妾(こうしょう:王の愛人)であるフランソワーズ・アテナイスとの時間を過ごす為の隠れ家でもありました。
グラン・トリアノンは、1687年からマンサールの指揮の元で建築されました。
柱や外壁にピンク色の大理石が用いらているのが特徴で、「マーブル・トリアノン」(大理石の離宮)」とも呼ばれます。
特に中央にあるコロネードまたはペリスタイルと呼ばれる列柱廊は見どころです。
離宮と言えど、内部はとっても豪華です。ヴェルサイユ宮殿に勝るとも劣らない豪華な家具が置かれた部屋が並びます。
部屋ごとに家具の色が異なっており、それぞれの部屋のテーマカラーのようなものがあります。
プチ・トリアノン(小トリアノン)
もうひとつの離宮である「プチ・トリアノン」(小トリアノン/Petit Trianon) はアンジュ=ジャック・ガブリエルが設計した新古典主義の建築です。
プチ・トリアノンは、1768年にルイ15世と彼の交妾であるポンパドゥール夫人の為の離宮として完成しました。
しかし、その時すでにポンパドゥール夫人は亡くなっていた為、離宮はルイ15世の新しい公妾になったデュ・バリー夫人に与えられました。
その後、プチ・トリアノンを与えられたルイ16世の妻であるマリー・アントワネットはこの場所を気に入り、彼女が愛したイギリス式の庭園や「王妃の里村」と呼ばれる農村に見立てた集落を作りました。
マリー・アントワネットの死後は、たびたび彼女の幽霊が目撃されたという噂もあります。
プチ・トリアノンの内部はロココ様式で造られています。
豪華絢爛なバロック様式に対して、装飾を抑え、植物など自然をモチーフにした繊細なデザインが多いのがロココ様式の特徴です。
ロココ様式の代表的な建築物には、オーストリアのシェーンブルン宮殿や、ロシアのエカテリーナ宮殿などがあります。
こちらがプチ・トリアノンの居間です。シャンデリアや絵画は飾られているものの、天井や壁はシンプルな作りです。
宮殿と庭園、トリアノンを含むヴェルサイユ宮殿の敷地は80ヘクタール以上もありますが、フランス革命以前は現在の約10倍敷地面積があったというから驚きですよね。
全てをじっくり見て回ろうと思うと1日あっても足りないくらいです。
ヴェルサイユ宮殿の開館時間・入場料
■ヴェルサイユ宮殿 (Château de Versailles) | ||
営業時間 | 4月〜10月 | 9:00〜18:30 |
11月〜3月 | 9:00〜17:30 | |
休館日 | 月曜日、1/1、5/1、12/25 | |
入場料 | パスポート(全施設に入場可能) | 20ユーロ |
宮殿のみ | 18ユーロ | |
グラン/プチ・トリアノン | 12ユーロ | |
HP (英語) | http://en.chateauversailles.fr |
※2019年1月現在。最新の情報はホームページでご確認ください。
ヴェルサイユ宮殿への行き方と、チケット購入の行列を回避する方法は、下記の記事でご紹介しています。
パリからヴェルサイユ宮殿を訪れるツアーは「VELTRA」のホームページで予約できます。
次回からはパリに戻り、定番の名所をご紹介します!